技能の検定「ルーツ」と「今」

商品ディスプレイ専門家の国家資格検定は今

欧州と日本には、商品のディスプレイを担当する専門家の技量と知識を国で検定して公証する制度がある。この職種の国家検定には、欧州のライセンス保持者にのみ就業が許可されるものと日本の自己研鑽と啓発の証とするものとがある。
我が国の制度は比較的新しく、昭和61年(1986年)に労働省(当時)が実施する「商品装飾展示技能検定」として登場した。現在では厚生労働省が毎年実施している。

職能技能検定のルーツは西欧中世のギルドに

検定制度に伝統のあるヨーロッパでの検定の課題は技能と美的センスと実務に必要な知識を問うもので長年の経験から割り出された。
産業革命後、商品が工場で生産され流通が促進されはじめた時代には、以前にも増して商品を魅力的に見せるという必然が増す。産業革命が進行した18世紀から19世紀にかけて、職業技能訓練のための「職業ギルド」「職人ギルド」の徒弟制度も近代化を進める。技術が進歩して専門化が進行すると実地の技能訓練に加えて職場内に留まらぬ学校教育が必要となった。
1852年創業のパリのボンマルシェ(右欄に写真)百貨店を先駆として新しい小売りの業態が誕生した19世紀後半から20世紀にかけて、大型ガラスのショーウインドウの登場に同調してディスプレイ技術、技能は急速に進化し重視された。仕事の変化、表現の多様化に同調した専門家呼称の変化については、このサイト別ページ「VMD前後左右」に述べた通りである。
かつて専門家は、ショーウインドウの空間構成、各種の商品、特に衣服を見せるためのスキルのほか、大道具、小道具とも自製のため、木工と経師技能、シルクスクリーン、ショーカード活版印刷も必須技能とされた。ところが今日では、多店舗一斉同一展開という事情などもあり小道具の内製の他に工場への外注も行われるようになった。コンピュータのMACと専門ソフトなどは鉛筆、烏口、ロットリング、インク、絵の具、定規、各種用紙の役割を果たす。デザインや各種図面、パース、スクリーン、ショーカードなどを作成して出力を行う。

マスターの“マスターピース”が検定の課題だった

スキルの実地教育のためには、見習い制度、学校教育などが工夫されてきた。そのルーツには、古くから同様の制度を持ったギルドの存在が見落とせない。中世のヨーロッパでは、手工業ギルドを中心に同職組合が形成され、親方(英語 マスター、独語 マイスター、仏語 パトロン)、職人、徒弟という身分制度があった。手工業技能は、技能教育が制度化され親方、教師により実地の訓練・教育により伝承された。
徒弟が職人になるには、4〜10年の見習いの後、検定課題の親方(マスター)の作品“マスターピース”を手本として制作し審査合格後に徒弟は職人に昇格した。
実はこのような制度は、医術の専門的技能、弁護など専門的技術の必須な職種でも同様であった。この名残は、現在でも“Apprentice”というステージで見かけられる。Apprentice(徒弟、見習い、実習生)は、ラテン語の「つかむ」「学ぶもの」を語源として「学ぶ」という教育観の一端がわかる。

ベーシック・スキルとコンテンポラリー・スキル

時代と機器・用具とスキルの変遷と連動は、どのジャンルにも存在する。たとえばグラフィックデザインの教育で、烏口、雲形定規にかわりMACによるベジエ曲線を用いた文字デザインなど、駆使する機器・用具・スキルも変化を見た。
多種多様な企画で登場する商品の店頭展開も、かつて主力のショーウインドウの留まらず、インストア(店内)のディスプレイの重要性が認識され、そのテクニックとスキルも開発を継続してきた。
造形、プレゼンテーションの基本とされるものは、「ベーシック・スキル」「クラッシク・スキル」として存在し、Apprentice の訓練課題として他分野の専門家教育と同様に関心をもたれている。それらは新しい感性の表現として登場する「コンポラ・スキル(コンテンポラリースキル)」ともどもに永遠の研究対象とされる。
ノンスキル・スタイルが表現の一角にポジションを得てから、スキルの存在理由は常々問われてきた。そして今日では専門家として現場の実務、プロの心得としてあらゆる需要と要請に応えるために不可欠であり訓練が必要という見解が支配的である。
マーケットという形のないものを、マーケティングという観点で、マーチャンダイジング及びマーチャンダイズを確かめて形のある表現をする。
そこではビジュアル・プレゼンテーションとその上位概念のビジュアル・マーチャンダイジングがベースでありキーワードとなる。
日本ビジュアルマーチャンダイジング協会が支援をする「商品装飾展示技能検定」には、多種多様なビジュアル表現を実現する専門技能向上が課せられている。

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インストア・ディスプレイを担当するディスプレイ担当者(ロンドン)

ショーウインドウに商品をインストールするエタラジスト(パリ)

ボンマルシェ百貨店のエタラージュ(ディスプレイ)は創業時代にも評判(パリ)

専門スキル「ドレーピング」を駆使した航空会社のディスプレイ(チューリヒ)

クロス中央を摘んで作ったバラの飾り物。結婚祝いギフトリストのディスプレイ(パリ)


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