ビジュアルノート
このコラムは、2003年4月から2011年12月までトップページで100回あまり継続いたしましたが、2012年1月のトップページのリニューアルにより終了し、トップページからこのページに一部を移動させていただきました。今後このコラムの機能はFacebookにて継続いたします。
VMD標榜の書籍は1953年にアメリカで刊行の Jim Bucley によるA4版ハードカバーの「THE DRAMA OF DISPLAY」が先駆け▼書名の副題は "Visual merchandising and it's techniques"。VMDにはセンスとビジネスセンスが必要と述べ視覚を生かした販売の理論と技術を開陳▼VMDに関する代表的な書籍は、1950年代から現在まで洋の東西でおおよそ80冊余り。やはりアメリカが多数で1980年代、1990年代、2000年代が特に隆盛でした。▼東西とも経済と感性と消費の鏡のようにプレゼンテーションは時代を映しています(2011.12.1 佐藤昭年)
ヘミングウエイの『移動祝祭日』にたびたび登場する「シェイクスピア・アンド・カンパニイ書店」▼初代書店はショーウインドウにセレクト本をフェイスアウト。いまは創業者のシルビア・ビーチの初代書店名を彼女の没後に継いだ経営者がノートルダム寺院近くで盛業中。オンラインショップではイベントも告知▼1921年から1926年のパリを描いた『移動祝祭日』の「セーヌの人々」には、妻ハドリーとの会話体で、セーヌ通りのウインドウショッピングの魅力に触れています。http://www.shakespeareandcompany.com/hurete (2011.11 .1 佐藤昭年)
リアルショップのウインドーガラス中央。ZARAhomeのコピーはお買い上げはオンラインショップで!▼リアルショップで奥行きのないウインドウの手前にルームアクセサリーとクッションやキルト。背景写真パネルはベッド、スタンドなどの画像で3次、2次元の混成です▼www.zarahome.comのサイトは、カテゴリーのトップが秀逸なライティングで印象的なVP。サイト内の連結頁では単品、コーデとアイテム細部をクリックで拡大可▼いま欧州、中東、中国、メキシコ、アメリカなどでリアルショップとオンラインショップのクロスで人気(2011.10.1 佐藤 昭年)
リアルショップのショーウインドウでオンラインショップの宣伝例。ロンドンではTOPSHOP.COMをオンオフのデジタル風のプレゼンテーションで▼日本経済新聞社によれば英国のオンラインショップは、2010年現在リテール販売額の13%で20%に接近▼このリアルショップとオンラインショップで注目のハイストリートファッションブランドは、1964年にピーターロビンソン百貨店で誕生し1974年に独立。その後製造小売りとして戦略的に洗練度を高め、いま世界29カ国で躍進▼話題は新ビジュアルディレクターに著名なTim Whitmore氏就任(2011.9.1 佐藤昭年)
デジタルサイネージとスマートフォンは、購買行動を変えると話題しきりです▼デジタルサイネージは電子看板と訳され映画館のポスター、書店の書籍情報、カフェの商品紹介、ファッション店の新着商品特報、化粧品や食品の棚のプロモーションなどでおなじみ。スマートフォンは、スマホと略されモバイルなパソコン機能とケイタイの役割▼WWD紙でもスマホはエディターやスタイリストやバイヤーの仕事に影響をあたえるという見方を紹介▼海外での論議は2010年の春から。VMDの世界もI CT、SNSとレビューサイトの進化で変化の局面(2011.8.1 佐藤 昭年)
再びセーヌ川のポン・デ・ザールの景観です▼多くの南京錠が取り付けられると景観と重量の均衡が懸念されるのは、あながち冗談ではないようです▼この橋は第1次、2次世界大戦時の被爆と3度もの船の衝突! その後1802年のデザイン原型を元に、修復は1982年に着工し1984年に竣工しました▼かつて京の鴨川に、日仏友好のしるしとしてポン・デ・ザールを架橋する案がありました。改修橋の除幕をした当時の大統領で親日家のジャック・シラク氏は乗り気だったよう。しかし京の景観にはそぐわないとして東西の架け橋案は流れました(2011.7.1 佐藤 昭年)
暗過ぎず、明る過ぎず……。このパリの地下鉄駅はクリュニイ ラ ソルボンヌ(Cluny-La Sorbonne)。古くそして新しい駅といわれ、左岸はカルチェラタンのソルボンヌ大学とクリュニイ博物館近くに位置します▼1930年に開設されましたが、至近の300mに隣接駅があり、1939年から1988年まで閉鎖されていました▼ホームの天井にはカラフルな抽象化された鳥と著名な政治家、芸術家、科学者などの署名がモザイクでレイアウトされています。そのアーティストのジャン・バゼーヌ(Jean Bazaine/1904-2001)は、照明設計にも参加とのこと(2011.6.1 佐藤昭年)
ポン・デ・ザール(芸術橋)は、ルーブル美術館のあるパリ1区と国立美術学校のある5区を結ぶ古い橋で全長155メートルの歩行者専用です。この鉄と板製の橋は眺望にすぐれ散策スポットであり古いシャンソンでも有名です▼シテ島やルーブルの遠景を前に、いつからか欄干の金網に無数の南京錠が近景となり、それらにはカップルの名が記してあります▼金網に固くロックしたプレゼンテーションは、まさに人々の「前」に(カップルが)「存在」するという語源そのもの。パリ再訪で再見したり、錆びた鍵に年月を想ったり……連想はパノラマのように。(2011.5.1 佐藤昭年)
日本航空の赤い鶴丸マークは、4月1日から細部をリファインさせ再デビュー。今後機体の塗り替え時にこのマークに順次変更だそうです。この複数マーク交差場面は2006年5月の成田出発時の偶然▼かつてわが同胞が海外で遠来の鶴丸マークに励まされた挿話はいくつも。そのJALのCIは、デザイン学生の教材でもありました▼鶴マークはルフトハンザ航空も同じ。同社のC・フランツ取締役会長兼CEOは鶴丸マークこそJALのアイデンティティとスイス紙にコメント▼たたんだ翼や帆を広げて見せるのはディスプレイの原意。JALの垂直尾翼に掲揚。(2011.4.1 佐藤昭年)
歴史上のカルタゴと重なるチュニジアの伝統菓子です。コバルトブルーとピュアホワイトは、チュニジアン・カラーそのもの▼パリはカルチェラタンの小さなお店のウインドウで、半世紀以上も同じロケーションで同じプレゼンテーション▼かく言う私も60年代からのウインドウショッピングでしたが、飾らない人柄の店主と初対面ができました▼素朴な形と色のお菓子はアーモンドやピスタチオ、ヘーゼルナッツ、胡麻やデーツ、蜂蜜でしっとり。伝統のフランス菓子より甘さ控えめで、その平安なプレゼンテーションを“味読"いたしました。(2011.3.1 佐藤昭年)
ボンマルシェ百貨店は通信販売でも先駆でした。19世紀後半のフランス鉄道の発展は、遠方の顧客に商品配達サービスが可能になり大きな成功をもたらしました▼1894年に発行された縦24cm、横15.5cmの小さなカタログの表紙は、活版2色刷りで本文は墨1色の精巧な商品挿画。写真製版もカラー印刷も未完成でしたから、シャツの生地は現物の細片を見開き頁に一つ一つ貼り付けています▼リテールの語源の「小さく切る」を、そのままに表現したかのようです。12月のコラムで通販に関心をもたれた方がたへアップいたします。(2011.2.1 佐藤昭年)
ロンドンの火力発電所を改築したテート・モダン美術館の透明なパネル状寄付金ボックス。カラフルなアクセントのあるボックスに寄付した硬貨や紙幣が透けるディスプレイ▼テート・モダンの設計は、スイスのヘルツォーク&ムーロン▼2005年開館当時、寄付金ボックスは小型でオーソドックスなデザインでした。名作を鑑賞、触れ、楽しむ。その対価として入場料の代わりに寄付をする。Come back soon. の呼びかけどおりにリピーターも増加した模様です▼寄付が誰にも目に見える形でビジュアルに楽しく、美しくデザインされています。(2011.1.1 佐藤昭年
Window in show windowはパリ、Shop in shopはニューヨークで着想されました。この「ショーウインドウの中のウインドウ」は、いわばツイッター風のビジュアルなメッセージで、数秒のコミュニケーションが可能です▼大型のショーウインドウを一部仕切って、顧客の視点高にあわせた設計。大型のエンタテインメント性のあるウインドウと共にボンマルシェの店頭プレイヤーです▼1852年創業の世界最初の百貨店は、創造性で顧客を引き付け、伝説のスペクタクルのようなディスプレイと通販も同業の先駆けとなりました。(2010.12.1 佐藤昭年)
著名なフルリスト、路上の花屋さん。魅惑的なパリの花。センス抜群のフルリストの花は、花と花、花と造型、花と空間が繊細。ディスプレイのユニークさが見事です▼かたや花の鮮度をストレートにプレゼンテーション。この左岸6区のオデオン市場にある老舗の花屋さんは、アパルトマンの日常を華やかにする花、パーソナルギフトの花の品ぞろえで人気。そのバラエティを配置配列、それらの鮮度を一見して伝える工夫は機知にあふれています▼フルリストの花、日常生活の花ともどもに、いづれもセンス満開の花々はパリの華。(2010.11.1佐藤 昭年)
書籍のプレゼンテーションについてリクエストにお答えします。左欄はロンドン・ピカデリーの著名なWaterstone's書店のウインドウです。Waterstone'sは紙の書籍と電子書籍とデバイスのソニー・リーダーを共に紹介しています▼このストアは著名なDillons、Ottakars、Hatchards書店とともにHMVグループ。イギリス、米国、アジアでCD、DVD、 紙の書籍、電子書籍、電子書籍端末を販売。電子書籍は本棚に並べられませんが端末に表紙をフェイスアウト▼Face out なる語は、書籍からアパレルの世界にまで、世紀を越えて存在します。(2010.10 佐藤昭年
紙の書籍のプレゼンテーション。ロンドン・テート・モダン美術館のショップは、棚づくり、平積みが魅力。棚上のスペースには「本の山に埋もれて読書する醍醐味」をコミカルに見せる演出画像。英語ほか12カ国語で注文できるオンラインショップでは、品ぞろえの観察と円高を享受できます▼イギリスの書店チェーンのピカデリー「 Waterstone's」では、紙の書籍と電子書籍と電子ブックリーダーを関連販売。「紙で読みたい本、電子書籍で見たい本」が共存▼ iPad、Kindle、Sony readerなどの登場は、読書シーズンのホットな関心事です。(2010.9.1 佐藤昭年)
世界のブランドがステータスを示すルーブル美術館隣接のショッピングアーケード。逆さピラミッドの地下広場を取り囲む商店内を透かし見る窓をApple は ショーウインドウに▼それは時にピラミッドのスケルトンが写り、場合により天空から注ぐ太陽光が反射する奥行きのない窓構造への対応▼手の写真は、カットアウトしてレイヤー仕立て。精細な画面もリアルに表現。内照式の背景はアイコンを楽しげにレイアウト。場と条件のスマートなソリューションとコミュニケーションです。あたかもその「窓」は、ショーウインドウへの来歴を物語っています。(2010.8.1 佐藤昭年)
ロンドンのハロッズ「インドネシア展」。即売イベントの“呼びかけ”はショーウインドウガラスにメッセージ貼付。インドネシアのロゴとツイッター流の短いメッセージの文字組みは、外光による文字の影でフロアに面白い効果です▼いま洋の東西ともショーウインドウのガラス上のエフェクトが流行。ガラスは磨きこみ商品は遮るもの無く見せるのとは異なり、商品は奥のレイヤーのようで、あたかもアプリのグラフィック・レイヤーの発想ともいえます▼このようなレイヤーメッセージは、いにしえの呼び売りの進化形のようでも……(2010.7.1 佐藤昭年)
彩り豊かでリアルなフレッシュサンプル。籠に盛った食材プレゼンテーションは、道行く人へのアイキャッチャー。ビストロ、レストランやファミレスの店頭販促には、リアルサンプル、デジタルサイネージなど趣向が凝らされます▼四季を通じて150種以上もの野菜が供される日本。更に海外より新種野菜がつぎつぎと登場して、特産野菜の東西という垣根は低くなりました。新しい味覚とともに食感と色彩と形状のサプライズが食卓に登場しています▼パリでは赤いラディッシュ、キャロット、白いオニオンがオンステージの季節です。(2010.6.1 佐藤昭年)
堤石に乗せられた古書は、棚差?、面陳、いわばゴールデン・ゾーンに並べられています。陳列箱から越境していささか眩しそう▼観光客はパリの思い出にごく稀な掘り出し本を探し、詩人アポリネールはセーヌと古書を詠いました▼セーヌ河畔の古書店ブキニストは、古書を求めてそぞろ歩きのブキヌールを待って、午後9時頃まで明るいパリの空の下で日がな一日の商いの季節です▼マロニエ新緑の時期はグランパレで稀覯本・豪華本の古書即売会、シャンペレでは古書・ポスター・絵はがきなどの市が催されて賑わいます。(2010.5.1 佐藤昭年)
リアルな商品プレゼンテーションと共にデジタルサイネージは新店頭販促。リアルな訴求と相乗効果で進化・試行中▼これは熱愛・崇拝の意“ジャドール”のプランディング動画。入店直前プロモーションはインパクトのあるアイキャッチャー。購入決定率を左右する購買直前のMPとSP。そこでも棚上デジタルPOPが商品説明と実演の代替機能です▼香水、コーヒー、ほうじ茶、チーズやクッキーのリアル・サンプルのパワーは5感訴求と現場の空気感をつくります▼そしてさらに入店促進のIT(ICT)などが相関・相乗するアピールに注目です。(2010.4.1 佐藤昭年)
たおやかに曲げたパイプ製のショップ・フィッティングスで心地よく緩めた空間。MDとVMDの世界がマッチしていると話題に。いわばリアルショップならではの空気感です▼筆勢あるカリグラフィのような文字によるメッセージは絵文字も加わり Peace and love / Spring 。店頭販促でカリグラフィやタイポグラフィは画竜点睛の役割となります▼よく知られるように、ここロンドンはW・モリスによる近代タイポグラフィ再見の地。書籍のプレゼンテーションからフェイスアウトなる専門用語が生まれ現代VMDに連綿。その魅力は磁力です。(2010.3.1 佐藤昭年)
オープン以来ノーフリルなプレゼンテーション・スタイル。1995年創業の生活雑貨店 PERIGOT です。これはルーブル美術館と地下で連絡のカルーゼル・デュ・ルーブル店▼ストアフロント空間に同じアイテムを徹底して反復させ目を引く手法。今回もショッピングカートの「特集」でデザインのニューバージョンを見せています。このペリゴのVMDは、生のまま、素のままにMDのエッセンスです▼いわゆる羅列ではなく意図を込めたアレンジメント。集合効果がインパクトとインプレッション。9区と6区の店と百貨店ショップでも人気。(2010.2.1 佐藤 昭年)
パリ左岸の fILOFAX のショップ・フロントガラスはShow & Tellならぬ "Tell & Show"の惹句がアイキャッチ▼合理的なシステム手帳をラテン風に使いこなす親近感の醸成モード。肉声のような書体で動感のあるレイアウトで▼1921年にロンドンで生まれた fILOFAX は、ロゴの頭文字に配した小文字の f で記憶され、かのヘミングウエイの『誰がために鐘は鳴る』でゲイリー・クーパーが戦場で使い話題に。いまファッショナブルな6穴バインダーシステム手帳は用途別MD、VMD、ストアデザインでまさにブランディング巧者“新年の計”。(2010.1.1 佐藤 昭年)
セーヌ河の向こうにオルセー美術館とエッフェル塔遠望。そのオルセーは西暦1900年パリ万国博時の元鉄道駅舎でエッフェル塔は1889年に建造されました▼1986年に改装のオルセー美術館は、23年ぶりのリニューアル中で来年12月竣工。天井の自然光と展示壁面の色調を変えた広い空間に、マネ、モネ、ルノワール、セザンヌ、ゴーギャン、ゴッホらの作品が一層際だてて展示される▼改装の期間、主要作品は世界を巡回。ゴッホの自画像やアンリ・ルソーの蛇使いの女は、東京国立新美術館に来年5月から8月に来日です。(2009.12.1 佐藤 昭年)
ガラス越しに見ていた洗いざらしのケースメント。ある日通りがかりにスナップすることにしました▼小さなホテルの窓ガラスにはカルチェラタンの建物までが映っています。このサンタンドレ・デ・ザール通りは、サンタンドレ・デ・ザール広場から西方のビュッシイを結ぶおよそ300メートルの狭い小路。夏の夜などは早朝までパリを去りがたい観光客のさんざめきが周囲の建物に反響します▼かつて古いマネキンがあった老舗はスタバに改装、観光絵はがき屋には新しい版元も登場。いずれも光の反射、透過、照射の一期一「絵」。(2009.11.1 佐藤 昭年)
紅葉の出現日が北から南へと移動する「紅葉前線」がネットに登場しました。先月中旬に北海道の大雪山系に始まり紅葉は列島を少しずつ南下中です▼紅葉には温度、水分、光、昼夜の寒暖の差と適度の湿度と紫外線が必要だそうです。そういえば奥入瀬、日光、箱根、八ヶ岳など山間部の渓流の近くは紅葉の名所があります▼標高の高い信州の高原は10月初旬にサラサドウダン、10月中旬にはヤマモミジなどで紅の秋となります。東京で紅葉はミシュラン効果で外国人増加の高尾山が11月中旬、六義園は11月下旬が見頃のよう。 (2009.10.1 佐藤 昭年)
月光のソナタで知られるルツェルン湖、これは陽光下の風景です。薄碧の空と深緑の岸辺を写すさざ波の湖面は、あたかも魔法のプリズムを透過したかのような色▼湖岸から湖心に吹く湖風が月光を揺らし、湖心から湖岸に吹く湖風が陽の光を弾く。このような日と月の光は、多くの音楽家や画家たちの霊感を呼び覚ましました▼多彩な水の表情は名作のモチーフ。D.ホックニーによるアメリカ西海岸のプール、モネが描いたフランスはジヴェルニーの池、シスレーが暮らしたセーヌ河岸辺などの水面が色彩の交響曲を奏でています。(2009.9.1 佐藤 昭年)
8月の異名「月見月」に芦ノ湖一面に照り返す月光です▼ジャズのスタンダード・ナンバーの「ムーンライト・セレナーデ」は、1939年にトロンボーン奏者のグレン・ミラーにより作曲されたスウィング・ジャズとして名高い▼ピアノソナタ「月光」は、1801年のベートーベンの作でその没後1832年に L・レルシュタープがスイスの「ルツェルン湖の月光の波に揺らぐ小舟のよう」だと命名したそう。どちらも「揺らぎ」と「スイング」感が心地良い名曲です▼芦ノ湖の紅葉は例年11月上旬から11月中旬。モミジ、カエデ、ナラが揺らぎます。(2009.8.1 佐藤 昭年)
漆黒の夜空に浮かぶパリはオペラ座ガルニエ。7月1日の日没は午後9時58分。薄青灰色の空がフェードアウトしてライトアップが映えるのはバレエ「リーズの結婚」終演後▼この夜は最古典のバレエ。かのニューヨークシティバレエの新風、松竹大歌舞伎の伝統など1875年完成のガルニエによる建造物のステージで拍手喝采を浴びた演目は多彩です▼パリのアトラクティブな夜間景観は、1950年代半ばに歴史的建造物のライトアップ開始から。1980年代前半には市内114ヶ所に9500台の投光器を設置。照明や広告の規制、景観規制など美的基盤とも。(2009.7.1 佐藤 昭年
やまなしの実が落下したのは、蟹の親子が住む谷川の底。原稿用紙7枚あまりの短編、宮沢賢治の「やまなし」は幻想的な珠玉の童話として愛読者が多いようです▼透明感があり色彩感に溢れる文章を彩るのは、……青い幻燈、白い泡、金雲母、青じろい炎、青じろい水……など20あまりの色の修辞が美しさを際だたせています▼例年やまなしの白い花は5月に開花、現地ではその小さな実を香りの良い果実酒をつくるため沈める。今春、信州南牧村海ノ口牧場の孤高の樹は花と若葉が同時。白い満開の花樹は幻に終わりました。(2009.6.1 佐藤 昭年)
季語は桜。<奈良七重七堂伽藍八重櫻>芭蕉。この自由自在さ、語順の美しさ。虚子の季語集にはこの句のほか、八重桜、遅桜、朝桜、夕桜、夜桜とイメージが広がります▼桜は、奈良の奈良八重桜、京都のしだれ桜、山梨のふじさくら、都のソメイヨシノと県花でも人気があります▼さらにここで酔狂な連想で桜づくしなど……▼サクラクレパス、サクラ印蜂蜜、さくらももこ。「桜」のこぶくろ、「さくら」の森山直太朗、「SAKURA」のいきものがかり……。桜をモチーフの連想はいかがですか?今年は上野の桜でした。(2009.5.1 佐藤 昭年)
ウイリアム・モリス。アーツ&クラフツ運動を主導した彼が青少年期を過ごしたロンドンは春のウォーター・ハウスです。ロンドン北東、地下鉄ヴィクトリアライン終点のウォルサムストウ・セントラル駅下車徒歩10分あまり▼現在はウィリアム・モリス・ギャラリー。近代デザインの父による織物、絨毯、壁紙、装丁、挿絵、タペストリー、家具、ステンドグラスなどが多数展示公開されています▼東京でも4月5日まで都美術館で「生活と芸術・アーツ&クラフツ展」の開催。モリス展の新しいコンセプトと運営が話題にのぼっています。(2009.4.1佐藤 昭年)
既出のケ・ブランリー美術館の庭で春を告げる紅いモクレンです。仏名でマグノリアという花木は主にアジア、北アメリカに生育しパリでも人気。原産は中国雲南省、四川省。当初英語圏でジャパニーズ・マグノリアと命名されたので、日本の花かと思われたり……。和名は木蓮。漢名は辛夷▼かつて千昌夫とテレサ・テンがアジアで大ブレークさせた「北国の春」。信州佐久出身の作詞家いではくさんが、♪こぶし咲く〜 あの丘、北国の〜 ♪の詩に綴るそのこぶしは木蓮とは親戚筋のよう。信州の高原では、少し遅い春を一斉に告げる純白の花です。(2009.3.1 佐藤 昭年)
フランス国鉄高速列車TGVの窓外を流れ去る緑の灌木。ISO64、絞り2.4、シャッター1/70。撮影はRicoh GR▼レンズは銀塩カメラ時代からの高画質で高精度な広角。小型ゆえ旅や外出に携帯しています。画像もA4誌面の印刷原稿として高精彩な仕上がり。直線が多いインテリアやエキステリアなどの撮影には、歪曲収差が少なく画面周辺でも乱れない。森山大道、アルフィーの坂崎幸之助、爆笑問題の大田光、糸井重里などプロとヘビーユーザーです▼GRのブログはhttp://blog.ricoh.co.jp/GR/。ご質問の皆さまにお答えいたします。(2009.2.1 佐藤 昭年)
明けましておめでとうございます。2009年年頭はパリの画像です。これでパリがコラムに登場するのは26回です▼ヘミングウェイのいう移動祝祭日の時空に、私は再び四季を過ごしたいと思っています。左岸のどの辺りにしようかとも一思案。いずれにしても1960年代から現在まで追憶の場の表象を改めて撮り比べしたいとの思いです▼このコラムの画像の大部分はコンデジ Ricoh GR ですが、その際は35mmフイルムカメラとフルサイズのデジイチも追加しましょう。これは昨年寄せられたお便りメールの質問にお答えしつつ将来への計です。(2009.1.1 佐藤 昭年)
ユーロショップ見本市のサンタクロースたち。いわばクリスマス・シーンの楽屋裏です。並置する実物を模した動く動物は無宗教色のショーウインドー・エンタテイナーズ。これはメリー・クリスマスからハッピー・ホリデイズになったグリーティング・カードと同じで無宗教色の現象です▼かつてはクリスマスカラーとサンタクロース。昨今はクリスマスのシンボル以外にモチーフやプロップスが種々登場▼ブラック・フライデーのセールは、感謝祭翌日金曜日のセールで小売ビジネスの Red (赤字)もBlack (黒字)に転化することを祈念して挽回。(2008.12.1 佐藤 昭年)
六義園、ふたたび。桜の回と同様、着信メールにお応えします。大都会の忙中閑へ関心と共感。これは中景となる渡月橋を園内で人気のビューポイントから。水に配した岩に渡す2枚の大岩の橋は水平な構成要素となる景観の作庭記▼その渡月橋は六義園の命名と共に園の主である柳沢吉保が傾倒した古今和歌集と世界の具現化といわれています▼元禄15年(1702年)に完成した吉保の思想や理念を体現するいわば「ビジュアライゼーション」「リアリゼーション」。今年の紅葉は11月下旬が見頃との予測。照会先はTel.03-3941-2222。(2008.11.1 佐藤 昭年)
黄葉の高尾山は都心から1時間あまり。来日・在住外国人にも人気沸騰のようです。ミシュランで3つ星に▼一方都内は文京区にあるこの六義園。近間な紅葉・黄葉鑑賞スポットで、かねてより在日大使館などがマーク。彩なす紅葉のモミジは美しい日本の秋色です▼もとはといえば小石川後楽園と共に江戸の二大庭園。国の特別名勝で回遊式築山泉水庭園。開園面積は87,809.41平方メートルと広大、樹木数6,020本のうち紅葉のモミジは450本。園内の高みにのぼれば、紅葉と遠中近の空間設計、巧みな造園が楽しめます。(2008.10.1 佐藤 昭年)
▼この日レマン湖は視界が開け、視野は対岸のフレンチ・アルプスの山脈とリゾート地エビアンの町までも。風光明媚な湖はクロワッサンのような形をした東西72kmの三日月型。仏語はレマン湖、英語、独語、伊語ではジュネーブ湖▼ミネラル・ウオーター採水地として名高いエビアンは、静養、保養の地。加えて警備が容易な小さな町ゆえ2004年6月には、サミットが開催され所在が印象づけられました▼撮影地の此岸にはチャップリンが晩年を過ごしル・コルビュジエも両親のため建てた小さな終の棲家が現存。この地を選んだ道理がわかります。(2008.9.1 佐藤 昭年)
オープンモールを「誘」舗道に。約200mの日除け雨よけは、柔らかな表情を添え空間造型アクセント。パリ市内東方、セーヌ川に沿ったベルシー地区のショッピングモール「ベルシー・ビラージュ」。もとボルドーワインの貯蔵倉庫群を再開発した人気のショッピング・モールです▼日曜オープンのブティック、レストラン、カフェ、画廊、シネマ・コンプレックスは観光客にも便利。メトロ14番線のクール・サンテミリオン(Cour St-Emilion)駅を下車してエスカレーターを上れば目前。新型の車両、改札、仏・英語の車内放送もシックと評判。(2008.8.1 佐藤 昭年)
ケ・ブランリー美術館は建築家ジャン・ヌーベルの才気煥発。かのアラブ世界研究所、ベルリンのギャルリー・ラファイエット、カルティエ現代美術財団、電通本社ビルなどに続く。2年前の6月に開館以来参観者は引きも切らず。パリのエッフェル塔近くで明快な展示環境と建築造型が人気です▼3500点を新しい「編集」と「見せ方」で。アフリカ、アジア、オセアニア、南北アメリカの原始美術品、民具・衣服・装飾品などを地域別にゾーニング。映像、音楽、写真、文字を駆使。月曜以外10時から6時半、木曜は9時半迄。レストランもお勧めです。(2008.7.1 佐藤 昭年)
信州の高原で5月下旬から咲く紅紫色のトウゴクミツバツツジ。6月中旬開花のシモツケや7月中旬から咲くヤナギランと同じ赤色系です。かつて春、夏、秋に咲く赤、白、黄、紫の花が一斉に咲いた夏は、百花繚乱そのものでした▼高原に咲く花は彩りも鮮やか。植物図鑑でその名を知りたい花はそこかしこです。しかし学術的な図鑑で探すのは容易くない。一方初心者向けに色別分類した簡略な花のガイドブックなどは花名に案外早くたどりつけます▼色がお客の第一位の関心事と看破したのはP・カルダン。追想連想の初夏が到来です。(2008.6.1 佐藤 昭年)
NHKBSで放映された「ファースト・ジャパニーズ」。パリの若きギャルソン山下哲也さんが登場。贔屓客は来店理由を繊細でスマートなサービスに魅せられて。「カフェ・ド・フロール」のサービスを一目見ようと日本人も増加▼エレガントに登場した遅番の彼と交わした握手は、重いトレイも優雅に扱う働く男の手でサービスを支える手でした▼東京で常用するホテル名入りカフェオレ用カップ・ソーサー。かつて宿からプレゼントされた品をうっかり割ったと悔やむと支配人から再びプレゼント。大きなカップと細やかな気遣いのパリでした。(2008.5.1 佐藤 昭年)
ユーロショップ2008。LEDメッセージ・スクリーンと変革のマネキン界が、クールとホットな話題です▼LEDはテクノロジーからメッセージメディアに。1962年イリノイ大学のN・ホロニアックによる発明は実用進化。紫・赤外線を含まぬ光、低電力消費やCO2削減でクール▼会場の華、マネキン数社は会場外に招待客を集めた個展を開催。先行社に猛追するアジアや東欧のマネキン社は、国外からリクルートした熟練クリエーターに創作を依頼▼中国から53社、台湾から20社、香港からは13社とEU加盟後の東欧勢がホット。(2008.4.1 佐藤 昭年)
桜は未開花のパリから東京・去年の桜をアップロード。昨今、世界の桜シーンのサイトが登場。実現すれば南北半球の朝桜、夕桜、夜桜など花巡りがネットで可能です。かつてこの頁で60年代にエッフェル塔近くで孤高の桜を話題にしましたが、近刊「巴里ノート」講談社刊(村上香住子著)ではパリ南方ソー公園の八重桜を花見スポットとして紹介。そういえばパリ市内にも桜が増えて小さな驚きです▼虚子の句に「咲き満ちてこぼるる花もなかりけり」。高浜虚子「歳時記」三省堂刊には、さらに季節感、情趣あふれる春の句が満開です。(2008.3.1 佐藤 昭年)
リュクサンブール公園の蜜蜂巣箱です。前出の噴水池から西南方向。152年前養蜂家のアンリ・アルネ氏が開設して今も現役。蜜蜂は公園内のマロニエ、林檎、梨などの密源植物と職住一体。秋に瓶詰め販売する蜂蜜を羽音高く集めます▼蜂蜜、蜂ろう、ロイヤルゼリーは蜜蜂の産物。巣づくりに学んだハニカム構造は建築やデザインの教科書に掲載され形態、軽量、断熱性に優れ航空機部材に応用されます▼甘いハニームーンも結婚後1か月間蜂蜜酒を飲んで祝う古代ドイツのチュートン人の甘い風習に由来。米英でハニ〜は相馴る呼称であります。(2008.2.1 佐藤 昭年)
パリのカフェです。パリ風に“キャッフェ”では、立ち飲みと店内席とテラス席で同じコーヒーが1物3価。かつて日本の飲食業視察団の1人が立ち飲み価を知り新業態を着想し日本で大コーヒーチェーン店を仕上げた実話もあります▼西洋同様、日本でもカフェ業態は変遷。懐メロのカフエ、フォークの喫茶店、BGM選曲のコーヒーショップ、今時は癒しの場とも。業種がこれほど業態分岐した例は多くない▼曇天のパリ発2時間後にはヴェネチアのサンマルコ広場。1647年創業伊国最古カフェ・フローリアンで陽光のテラス席のエスプレッソも可能。(2008.1.1 佐藤 昭年)
冬のリュクサンブール公園。噴水は半ば凍てつき水鳥は池の氷上に戸惑うかのように佇んでいます。それでも近隣の住民やパリ大学の学生達は冬の公園をそぞろ歩き▼やがて訪れる花の季節には、公園の西方にある巣箱の住民である蜜蜂も花から花へ密を集めて飛び交います。珍稀な蜂蜜の採取地には中国の天山、欧州のピレネーなどが知られていますが、意外なのは市街地の中にあるリュクサンブール公園やオペラ座の屋上です。そのオペラ座の蜂蜜は著名ブランドのコンフィテュールに話題性を添えてパリとカロリーの甘い誘惑のレシピです。(2007.12.1 佐藤 昭年)
オー・ノム・ドゥ・ラ・ローズ。バラにまつわるアイテムのリアル店舗と美しく品定めしやすいネットショップ。品ぞろえはバラの花、バラのジャム、砂糖菓子、ロウソク、ポプリ、芳香スプレー、ソープなどバラづくしです▼1991年に1号店をパリ左岸のトゥルノン通り4番地に開店。その後パリ市内から“バラの名において”5カ国に▼ショップも商品プレゼンテーションも人気。散らした花びらはアテンションゲッター。ショッピングサイトは良く設計され、分かりやすく、見やすく、買いやすい。www.aunomdelarose.fr(2007.11.1 佐藤 昭年)
岳樺や唐松の黄葉、山紅葉や満天星(どうだんつつじ)の紅葉と常緑の緑葉とが奏でる秋の高原協奏曲。いよいよ日本列島は高地から美しい秋色の前奏曲です▼北米のニュー・イングランド地方の銀杏やポプラの黄葉。それはこの地で誕生したフィルムの黄箱の色のよう。日本生まれの鮮やかな緑箱は、世界中に進出。この2社のフィルム店頭陳列は、店内の主調色を変化させてきました▼フィルムのパッケージは、デジカメの時代に視界から遠ざかりました。しかし黄と緑の箱がつくったコーポレート・カラーは残像の累積です。(2007.10.1 佐藤 昭年)
マルシェ・ラスパイユは、パリ6区の地下鉄レンヌ駅付近で火曜と金曜の午前7時から午後2時過ぎまでの露天市。開店前の帽子、ボタン、ブローチ、イヤリングなどは出番待ち。鏡はリラックスして横たわり天空を写しています▼帽子といえば「参った! すご〜い!」の“脱帽!”はフランス語「Chapeau !」の直輸入。その帽子、団塊の世代には里山歩き、名所巡りで日除け、防寒を目的に実用の兆し。男子帽久々の復活で帽子のウエブサイトも活況です▼20世紀中葉まで欧米クリスマス・ウインドウはマネキンもお客も帽子を着用でした。(2007.9.1 佐藤 昭年)
バカンスは島。かつてエーゲ海の島を選んだ村上春樹はその日々を機内誌に掲載。旅行誌はまばゆい純白の建築と紺碧の海で旅情を誘いその色は白と青で国旗色と同じ▼アテネのピレウス港から70キロの洋上、フェリーで3時間半の小さなイドラ島。港の小高い丘を見上げると18,9世紀に建てられた貿易船主の大邸宅と寄り添うような家屋が美しいカラー・トーンで和ませる▼潮の満ち引きのような観光客。古くから美術学生宿泊施設もあり芸術家の島の印象を重ねた。漆喰の壁と小路がキャンバスのように白い。(2007.8.1 佐藤 昭年)
果実店のプレゼンテーションがフレッシュです。伊勢丹新宿店地下売場、サンフルーツ・ミッドタウン店のショップフロントでは、果実が一際美しく映えています▼レモンの黄、林檎の赤、ブドウの緑に加えてアップルマンゴーの金赤の果皮色。宮崎産「太陽のタマゴ」は今や「時の果物」。美味芳香のアップルマンゴーの食欲を誘う彩度の高さは、東国原知事の登場で更に衆目を集めました▼果皮色は店頭でポイントのアクセント、集積してインパクト。果実生産の場では果皮色の測色計も。いまやその周辺は色めきだっています。(2007.7.1 佐藤昭年)
デザインに惹かれてバスに乗る。バスはパリ市交通局が運営。そのデザインチームを率いるのが Yo Kaminagai氏。バスと地下鉄、急行郊外列車などの車両、設備、環境をデザインとアメニティの観点でとりまとめている。1958年パリ生まれでジャポネ。この生粋のパリジャンはモダンで洗練されたデザインで L'Observeur du Design も受賞▼パリ市交通局、RATPは1889年の当時も時代の先端を行くアールヌーボーの建築家ギマールに、地下鉄の出入り口のデザインを依頼した。彼等は伝統を継承してパリ市を快適にイメージングしている。(2007.6.1 佐藤 昭年)
テーブルは舞台、料理は役者、シェフは”兼任監督”、ギャルソンは演出者……。このパリのレストランのウエルカム・プレゼンテーションは、純白のテーブルクロスとナプキン、プレート、そして磨いたグラスとカトラリー▼味覚と視覚と嗅覚をも満たす人気料理は、味わい、色どり、バランス共々時代を写す鏡です。大昔、食卓にお客がナイフを持参した時代、フォークが登場した年代。そして今カロリーをおさえる時勢にフランスでは、ワインよりビールの若者世代が増加。お客を迎えるテーブルでは、さまざまな物語が展開しそうです。(2007.5.1 佐藤 昭年)
午前10時22分。喧噪のプラットフォームは活気に満ちている。国内とスイス、ドイツ方面への列車も発着のパリ東駅は155年前に完成。その1852年は左岸に誕生した世界初の百貨店ご存じ「ボン・マルシェ」と同じ年です▼新しいビジネスモデルは、新しいテクノロジーで支えられる。「ボン・マルシェ」という業態は鉄道網の発展により促進。さらに鉄、ガラスを生かした当時最先端の建築技術も新しい業態に採用された。どちらも美しい鉄道駅、先端的小売店として新聞記事やエミール・ゾラの小説の舞台に。IT時代を振り返る時には。(2007.4.1 佐藤 昭年)
桜の開花が早まりそう。暖冬気味でスイスでは標高2千米以下に雪がない、ロシアでは熊が冬眠を忘れた?とか▼早朝のスイス湖畔の公園。目前が急に明るくなった様な光景に遭遇しました。それは桜の花びらの絨毯。踏まれていない、前夜ひとしきり散り落ちた花びらです▼「……白き花ちらちらと舞いて、一庭須臾に雪を散らす」徳富蘆花『自然と人生』の絵画的描写をおぼろげに思いだしました。でもそれは桜ではなく李の花弁。同著の色彩感溢れる”紅雨霏々、白雪紛々”などの修辞は日本の四季の美しいイメージです。(2007.3.1 佐藤 昭年) 
これは東京荻窪の乾物店。店主手作りの惹句を定価に添えたポップです。この業種業態にふさわしく、あえて縦書きで読ませる工夫は経験の蓄積。立ち止まったお客の視線は縦方向に誘導されて和の商品につながっています▼長年の商いから最適な書字方向を見つけた読みやすい書体と文字配置。視界が煩雑にならぬよう文板は統一▼中国語、朝鮮語、日本語など漢字文化圏で右から左へ行を進める右縦書き。「読む感じ」なら縦書き「眺める感じ」なら横書きという定説そのままに。豊富な品揃えと清潔感ある光景にふさわしい仕事。(2007.2.1 佐藤昭年) 
最近話題のPOP。書店や花店より先行したのがビストロやレストランのメニューボード。清拭したきれいな黒板にカラーチョークで丁寧に書き、描く。「本日のお勧め料理」は書き手のチョーク術発揮と腕の振るいどころです▼食欲を誘う献立と価格が目につき、見やすく、感じよく。料理のイメージまで字体と配色と気配りで伝える▼古いフランス映画で、寒い朝にメニューを見て「肉入りスープ」を注文する。それは「レストラン」という語が気力、体力を回復させるという意味のフランス語から派生したことを実感させるシーン。(2007.1.2 佐藤 昭年)
花びらでモザイクのような作画。それは小さなピクセルでつくるデジタル画面に似ていますが、こちらは手作業▼インフィオラータは、イタリア語で花のじゅうたん。ローマ近郷のジェンツアーノの町では200年余の伝統▼70年代からそれはイタリア国内、アメリカ、カナダ、やがて日本で神戸、東京、長野などに伝播。東京晴海のトリトン・スクエアは、2001年より現地と交流を行い、今年も11月初旬に開催。なんと14万本のバラの花びらと色砂が、日本の行事、映画や昔話の画題を表現していました。(2006/12.1 佐藤 昭年)
江戸時代の風情を残す大正時代の「鼻緒製造卸店」再現。ところで鼻緒(はなお)とは草履(ぞうり)や下駄(げた)など履き物に用いられる緒(お)と説明がなくては、外国人や若者には通じにくい。この東京上野にある区立下町風俗博物館では、お店と商品の見せ方が実体験できます▼博物館はデザインを学ぶ学生だけでなく、商業関係の国内外客にも教習と郷愁の場。当時の商家建築、暖簾や帳場格子などが関心事です。店頭の売り方と見せ方は、前回のロンドン最古の傘とステッキ店と同様にMDとVMDの原点を見ます。(2006/11.1 佐藤昭年)
ニューオックスフォード通りにある創業177年目のロンドン最古の傘とステッキ名店は、現存するビクトリアン様式としても著名。ファサードのレタリングは、板ガラスの裏から書いた時代物。家族経営だからこそ残りました▼お客に似合う傘を見立てる。ステッキ代わりの歩行時に、快適な寸法を得るために、お客の身長と腕の長さに合わせて傘の中棒を地下の作業所で調整してくれます▼古来真っ直ぐだった傘の柄を、ステッキの柄と同じハンドル形に変えた老舗。畳んだ傘の美観を見せる方法は、19世紀初頭そのままの表情です。(2006/10.1 佐藤昭年)
日本でもパティシエになりたい若者が少なくない。センスが生かせ創意が発揮できる仕事、運が伴えばスター・パティシエも夢でない……と挑戦しています▼フレンチの実力派パティシエが、日本で成功の階段を昇り、パリで気鋭の日本人パティシエが成功を収める。その情報はたちまち東西に伝播して、日本でパリで行列を誘い人気が人気を重ねることになります▼王侯貴族、高級聖職者のケーキは、砂糖の大量生産で事情を一変。美しいかたちと色彩がウインドウを覗く人の理性を溶かしているかのようです。(2006.9.1 佐藤 昭年)
早朝のセーヌ河畔。これは開店前の古書店の店頭です。恐らく推奨図書を、ショーウインドウのガラスに背表紙をぴたりと寄せて見せる。つい、スリーブアウトだなぁ▼見やすく一覧させる発想に感心。これまで随所で書きましたが、フェイスアウトは、19世紀のイギリスの書店で生まれた概念と方法がアパレル界に転用されたもの。それでは、いま欧米の書店でこの見せ方ををどういうのだろう?▼在庫の傾向が店頭でおおよそ分かる、書名が外からくっきり読める便利さは、お客の目でお店を外部から観察して考えついたものでしょう。(2006/8.1 佐藤 昭年)